絵本とバイリンガル子育てのペリカン文庫

子育てを通して出会った絵本や英語の教材を紹介します。 バイリンガル教育のヒントにもどうぞ。

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こんな先生に私も出会いたかった!

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Thank you , Mr.Falker  by Patricia Polacco

次女は今でもよく私が気に入りそうな本を教えてくれますが、この絵本は次女が1st Gradeの時に「今日学校で読んだ本ね、はじめ悲しいけどすごく良いお話しだった。ママも好きだと思う」と教えてくれました。

さっそくすぐに次女と一緒に読んだのですが、もうママ大号泣でした。次女が引くほど(笑)今もこの記事を書くために読み返して泣いてます。このお話しは作者パトリシア・ポラッコの自伝的なものなのですが、そこに私自身の経験も重なって、とても感動してしまうんです。思いが溢れてちょっと長くなると思いますがお許しください。

主人公Trishaはおじいちゃんとおばあちゃんの農園にお母さんとお兄ちゃんと一緒に暮らしています。一家は本が大好きで、みんなが読み聞かせをしてくれるのでTrishaも物語が大好きです。自分も本を読めるようになるのを楽しみにしていました。でも学校に入ってもなかなか読めるようになりません。低学年のうちはそれでも絵を描くことで楽しんでいましたが、学年が上がっても文字は読めないまま、クラスメイトからもからかわれます。

まもなくして大好きなおばあちゃんとおじいちゃんが亡くなり、母親の仕事の関係で都会へ引越すことに。転校先の学校では文字が読めないことでTrishaはそれまでより露骨に”dummy””stupid”といじめを受けます。理由をつけては学校を休んだりしていました。そして5年生になったとき、タイトルにあるMr.Falkerが赴任してくるのです。背が高く上品なこの先生は、それまでの先生のように目立った子や気に入られようとする子たちを特別気にかけたりはしません。落ちこぼれ扱いだったTrishaの絵の才能を認め、執拗に彼女をいじめている生徒を叱り、そしてなぜ彼女が読めないのかを放課後一緒にゲームをしながら探ります。そしてTrishaが文字の認識が困難であることを理解します。

先生は自分のことをみんなが言う通りのダメな子だと思っている彼女に、他の人のように文字や数字が見えないのに、長い間優秀な先生たちの目をかいくぐって(彼女は読めないので隣の子が読み上げたものを暗記したりしていました)ここまでやってきてすごい!君は賢く、勇敢だ!と彼女を褒めてくれます。そして”You’re going to read-I promise you that.”君は読めるようになる。約束する。と励まし、彼女が読めるようになるための特別授業をReading teacher のMiss Plessyと始めてくれるのです。

当時はまだ文字の認識が困難なディスクレシア(dyslexia)という学習障害は認知されていなかったとと思います。きっと先生たちは手探りだったのではないでしょうか。

彼女が読めるようになった時、関わった先生たちが自然に涙するところに、子どもの成長がもたらす喜びを実感します。

私も小学校時代、勉強が困難な時がありました。4年生までいた小学校は県のモデル校になっていて、教育熱心というか独自の教材やテストを使うし、進み具合も早くどんどん詰め込んでくる感じでした。そんな中で私はとにかく暗記ができない!九九や漢字、東西南北に至るまで、反復しても覚えられない。クラスで順番を競って張り出されたり、先生や親の前で言わされるのに足がすくんでしまう感じは今でも覚えています。その時のクラスメイトの視線や、大人の呆れ顔に自分がダメな子だって思い込んでいくTrishaの気持ちが良くわかります。

このお話しを読んだときに、子どもを受け入れ、寄り添い、励ますという大人がどんなに子どもにとって必要かということを実感しました。それは本が読めなかったTrishaがやがて絵本作家になるということが証明しています。残念ながら私にはMr.Falker のような先生は現れませんでしたが、私はそういう大人でありたいなぁと思っています。